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高松高等裁判所 昭和24年(控)954号 判決 1949年12月10日

被告人

高橋源吾

外一名

主文

被告人正岡義雄の控訴は之を棄却する。

原判決中被告人高橋源吾の関係部分を破棄する。

被告人高橋源吾を懲役六月に処する。

但し本裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

原審に於ける訴訟費用は全部被告人両名及原審相被告人四畑重正並同松本悟の連帶負担とし、当審に於ける訴訟費用は全部被告人両名の連帶負担とする。

理由

被告人正岡義雄弁護人堀耕作の控訴趣意第一点の要旨は、原審公判手続には法令違反があり、其の違反は明に判決に影響を及ぼして居る。即ち原審公判期日に於ける各被告人及び証人の供述のみで本件公訴事実を認定し得ないことは、原判決に証拠として右各供述の外檢察事務官作成の正岡義雄及高橋源吾等の各供述調書を掲記して居ることに依つても明である。然るに原審公判廷に於て立会檢察官は、証人白石德太郞が法廷に於ける供述と異る供述をして居ることを立証すると主張し、司法警察員作成に係る白石德太郞の供述調書の取調を請求し被告人及弁護人に於て異議を述べたにも拘らず、原審裁判官は之を受理すると宣言し、立会檢察官は該供述調書を朗読し、証拠として提出したことは、原審第三回公判調書に其の旨の記載があり、(記録一二三丁)現に該供述調書が本件記録に連綴せられて居る事実に徴し明である。併ら司法警察員の作成した供述調書は、刑事訴訟法第三百二十八條に依り証人の供述の証拠力を爭ふ爲の証拠に供することは出來るけれども、証人が前に司法警察員に対し、公訴事実に付積極的証拠になる樣な供述をして居るのに、法廷に於て消極的態度をとり微温的な証言をしたと言ふので、法廷に於ける証言を補強する爲司法警察員の作成した供述調書を法廷に顯出するが如きは法の許さざるところであつて斯の如きものは刑事訴訟法第三百二十一條第一項第三号に依り証拠能力のないものである。原判決は之を証拠として掲記して居ないけれども、公判審理に際し本件公訴事実に照應する被害顛末の供述記載ある該供述調書を証拠に供したのは公判審理手続に関する法令に違反するものであつて、その違反は判決に影響を及ぼして居ること明であると謂ふのであるが、檢察官が所論の如く白石德太郞が本日の証言と異る証言を爲して居る事実を立証すると述べて、所論司法警察員作成の供述調書の取調を請求したのは、とりも直さず刑事訴訟法第三百二十八條に所謂公判期日に於ける証人の供述の証明力を爭ふために爲されたものと認められるから、原審が之を受理したのは何等違法でない。

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